ワタリ『L……L……』
L「……。ああ…済まない。眠っていた」
ワタリ『いえ……それより、もうすぐ到着しますよ』
L「雛見沢村……4年連続変死事件……か。綿流し…鬼隠し…オヤシロサマ…。ミステリーのようだな」
ワタリ『私がLをこちらにお連れしたのは、休暇を兼ねてのことです。最近Lが休んでいらっしゃるところを拝見しておりませんでしたので』
L「余計なことを…。まあ、いい。資料を読んで興味を惹かれなければ拒否しようかとも思っていたが…」
ワタリ『お気に召しましたでしょうか』
L「いや……いい場所だな」
ワタリ(やはり疲れている……)
ひぐらしがなくですの
大石「世界最高の探偵L…この村に身を置いているんですかねぇ。」
熊谷「雛見沢分校に竜崎エルという転校生が……。」
大石「そんなことは分かっています! あらゆる局面においても警察の前にすら姿を表さないLが、わざわざ自分から学校に通うわけないでしょう!」
熊谷「に、偽物ってことですか?」
大石「当たり前です!」
L「どうも。今日から転校して参りました。L……竜崎エルです。よろしく」
沙都子「……個性的な方ですわね。」
梨花「目の下に凄いクマなのです。」
レナ「クマさん…かぁいいんだよー☆」
魅音「レナ……。」
詩音「お姉の好みとは程遠いですね。」
魅音「詩音!」
知恵「よろしくお願いしますね。竜崎くん。」
L「よろしくおねがいします」
レナ「竜崎くんはどこから来たの?」
L「難しい質問ですね…世界中を回っていますので」
沙都子「というか国籍は…。」
L「不明です。本籍は……あったかどうか……」
梨花「国籍が分からないのですか……。かわいそかわいそです。」
L「ありがとう…ございます…(私が…かわいそ…)」
魅音「なんで雛見沢に?」
L「観光です。秘書にここを薦められまして。日本のこういった場所は新鮮で気持ちがいいです」
詩音「田舎だって馬鹿にしてませんか? 少し出ればそれなりに栄えてるんですよ。」
L「馬鹿になんてとんでもない。そもそもこういう一所に留まる経験が乏しいので、本心から楽しんでいますよ。イギリスには五年ほどいましたが」
魅音「イギリスに五年!? ……世界中を回ったり…エルちゃんってもしかしてお金持ち?」
L(エルちゃん…)
L「そうですね……大富豪というわけでもないでしょうが。資産運用は秘書に任せてます」
魅音「頭もいいんだ?」
L「頭が良いかは知りませんが、常に使うようには心がけています。甘い物が手放せません」
魅音(これは……部活にいい人材が…。)
レナ「エルくんはお弁当持ってきての?」
L「はい。やはり皆さんと早く打ち解けなくてはいけないので、そういう準備は抜からないように、とワタリに言われました」
梨花「秘書さんはいい人なのです。」
沙都子「とても大きなお弁当箱ですわね。」
L「はい。どうぞみなさんも摘んでください」
レナ「わー……い?」
詩音「あ、甘いものしか入ってないじゃないですか!」
魅音「凄いデザートの量だね…肝心のご飯やおかずは?」
L「? これがお昼ご飯ですが…」
梨花「……。」
魅音「それでは、エルちゃんの部活参入を推薦します!」
レナ「意義なし!」
沙都子「わたくしもでしてよ!」
梨花「僕もなのです。」
L「はぁ……部活というのは?」
魅音「くくく……。」
詩音「ふふふ……。」
L「なるほど、つまりは知略を駆使してあらゆる状況にも対応できるような訓練をする部、ということですか」
魅音「そういうこと。まずはジジぬきね。エルちゃん、ルールは?」
L「知ってます」
魅音「話が早いね。じゃあ配るよ。」
L「その前に少し見せて貰ってもいいですか? …とても使い込まれていますね…」
レナ「結構年代ものだよねー。」
L「あ……すみません」
魅音「?」
L「珍しくて眺めているだけのつもりだったんですが、カードの傷と絵柄を完全に覚えてしまいました。もう忘れられません」
梨花「!!」
魅音「エ…エルちゃん強すぎ…。」
レナ「同じ人間とは思えないよ…。」
沙都子「わ、私の仕掛けた数々のトラップが逆に返されるなんて…!」
梨花「……。」
詩音「こんなところにとんだ怪物ですね…。」
L「誇張無く、とてもいい経験になりました」
魅音「またまたー。私たちなんて何でもなかったクセに!」
L「いえ…誰かとこうして遊んだ経験など孤児院時代から無かったので」
魅音「…ほんとに楽しかった?」
L「はい……皆さんとは一日も早く友達になりたいです」
レナ「? なに言ってるのかな?」
L「はい?」
詩音「喋ってご飯食べてゲームして……私たち、とっくに友達じゃないですか。」
L「……もう…友達……」
沙都子「今回は敗北を喫しましたけれど、次はこうはいきませんわよ!」
魅音「そうだね。部長であるおじさんの実力がこんなもんだと思われるのは心外だよ。」
レナ「次は負けないもんね、梨花ちゃん。」
梨花「おー、なのです。」
L「………」
レナ「どうしたのかな、かな?」
L「いえ」
大石「あなたがL…?」
L『いえ、そこにいるのは代理です。私はいま雛見沢に建てた家でおやつを食べています』
大石「そ、そうですか…。」
L『事件の概要は大体分かりました。事件資料にも目を通して……まぁ、ほとんど解明できました』
大石「!?」
L『とは言ってもまだ推測でしかないですし、まだ調べてみたいこともあります。……本当は綿流しの夜に実際に人が死んでくれれば一番いいのですが、やはりそれは防がなければなりません。当日の夜は警備を強化し、備える。当面はこれ以上言うことは無いです。それでは』
大石「ちょっ…!」
ワタリ「私はこれで」
大石「………。」
L『Lです』
大石「今日は何か…?」
L『これまでの捜査方針を見てまず思ったんですが……。とりあえず大石さんにはもうちょっと一歩引いた捜査をお願いします』
大石「!?」
L『結論から言ってしまいますが、園崎家はシロです。強いていうなら貴方が犯人です』
大石「は!?」
L『というのは言い過ぎですが……。貴方の接触の仕方はここの住民に他ならず、無知な人間ほど不安にさせてしまいます。雛見沢でなければ問題は無いのですが……申し訳ありません。それと鷹野さんの奇行にもちょっと注意を傾けてください。そこら辺の詳細はまた後日ご説明します。では、私は学校がありますので』
大石「……。」
レナ「エルくんー。教えて貰った証明問題も簡単に解けたよー。」
L「ヘルマーの定理の証明はコツさえ掴めば簡単ですからね」
魅音「エルちゃん、ここ教えてよ。波動関数がどうのってやつ。」
L「魅音さん…そこは先程教えましたが」
魅音「わかるか!」
L「……ここは?」
ワタリ『エンジェルモートという店です』
L「……なにやら物凄い賑わいだが」
ワタリ『本日はデザートフェアですので』
L「! デザート…フェア…だと…!」
ワタリ『チケットを手に入れるのに苦労しました。存分にお楽しみください』
L「素晴らしい働きだ」
ワタリ『がっちゃ』
L「ところで、お前は来なくていいのか?」
ワタリ『友人水入らずに、水は差せません』
L「?」
魅音「あー! エルちゃんいた。ヤッホー!」
レナ「今日はチケットありがとね。」
沙都子「魅音さんのコネでも入れましたのに、本当にエルさんはええかっこしいですわ。」
梨花「感謝感謝なのです。」
L「……ワタリ……」
詩音「みなさんいらっしゃいませ! 今日は…うわ!」
L「ああどうも詩音さん。とても素敵な制服ですね。魅力的です。デザートもとても美味しくて…」
詩音「…そ、それはどうも……凄いですね。」
魅音「お、おじさん…もうお腹いっぱいだよ……。」
レナ「レナも…。」
沙都子「底なしですわ…。」
梨花「……けぷ。」
L「そうですか? とりあえず全種類は制覇したんですが、まだ食べ足りません。それにしてもお世辞抜きに本当に美味しいですね。この店は度々利用させて頂きます」
詩音「……人間じゃねー…。」
レナ「こんばんわー。」
魅音「やーやー。」
L「お二人ともどうしたんですか?」
レナ「エルくんが家で一人ぼっちだって聞いたから遊びに来たんだよ。」
魅音「ついでに問題も作ってきましたよー。」
L「問題?」
魅音「じゃーん。」
L「……これは……。正解はおはぎですね?」
レナ「おはぎかどうかが問題なんじゃないよ!」
魅音「このどれか一つにある仕掛けをしてあります。どれでしょうーみたいな。私たちは正解知ってるからエルくんに当ててもらうよ。まあ今じゃなくてもオッケーだけど。」
L「なるほど面白いですね……全てお二人で?」
レナ「ううん。魅ぃちゃんのおばあちゃんも作ったんだよ。」
魅音「ふっふっふ…。毒が入ってるかもねー。」
L「素晴らしいです……。じゃあ一個頂きます。なんだかこれが正解な気がしますね……。もぐもぐ」
レナ「あ。」
魅音「あ。」
ガタン!
レナ「エルくん? エルくん!」
魅音「せ、正解!? 正解だったの!? でもタバスコが入ってるだけだからその反応はおかしいよね!」
L(やはり…私は間違っては……いなかった……。が……ま……)
レナ「エルくーーーーーーーーーーーん!!!」
沙都子「エルさん、わたくしがやってきましたわよ!」
L「よく来ましたね、沙都子さん。いま晩ご飯を食べていたところです」
沙都子「…どこをどう見てもケーキにしか見えませんが…。」
L「ああ、すみません。間違えました。晩ケーキです」
沙都子「晩ケーキ!?」
沙都子「そんなのばかり食べていると栄養が偏りますわよ!」
L「大丈夫です。人間の生態維持に必要な栄養素を練りこんだスイーツをワタリが作ってくれますので。ワタリが作ってくれますので」
沙都子「2回言いましたわね! そういうことじゃありません!」
L「?」
沙都子「たまにはちゃんとした『料理』を食べませんと、身体は大丈夫でも心がやつれてしまいますわ。」
L「…身体は大丈夫でも心が…。名言です、沙都子さん。涙が出そうです」
沙都子「……ですから、今日は私が料理を作りに参りましたの!」
L「…沙都子さんがですか? 失礼ですが今日は用事が…」
沙都子「本当に失礼ですわね!」
沙都子「キッチンを借りますわよ。」
L「ああ、はい…ワタリ」
ワタリ「はい」
沙都子「ど、どこから…。」
ワタリ「こちらです」
沙都子「出来ましたわー。」
L「…野菜炒め、ですか…」
沙都子「こういった食事こそ人間らしさというものですわ。さぁ、召し上がってください。」
L(甘いもの以外は久しく口にしていないな…)
沙都子「どうですか?」
L「……美味しいです。こういう食事は本当に久しぶりですよ。ただ…」
沙都子「?」
L「まだまだ改善の余地ありです。申し訳ありませんが、沙都子さんに私秘伝の野菜炒めを伝授します」
沙都子「え、ええ!?」
ワタリ(L……アレを…)
L「どうぞ召し上がってください」
沙都子「……お、美味しいですわ!」
L「何年ぶりでしょうか…特級調理師の大会で優勝して以来です」
沙都子「料理できるんじゃありませんの……わたくしなんて…。」
L「沙都子さんのおかげです。確かに私は何年も何年も人間らしい食事などしていませんでしたから。それを思い出させてくれたのは沙都子さんですよ。ありがとうございます」
沙都子「…エルさん…。と、当然ですわね! ところで、エルさん秘伝の調理方法を試しても構いませんか?」
L「はい。沙都子さんなら出来ますよ」
沙都子「少し教えて頂いただけでこんなに美味しく……!」
L「素晴らしいです。完璧とは言えませんが、上達が早いです」
沙都子「あ、当たり前ですわ! 淑女たるもの、日々進歩! もう数時間も前の私じゃありませんわよ!」
※大量に余った野菜炒めは、後でワタリが美味しく頂きました!
L「詩音さんと沙都子さんはとても仲が良いですね」
詩音「そう…見えます?」
L「? はい」
詩音「……良かった。……私…昔のことなんですけど、沙都子のこと嫌いだったんです。」
L「……」
詩音「でも、悟史くん……あの子のお兄さんなんですけど、その人から沙都子を預けられて…。あー、どうなんでしょうね。それが理由ってわけじゃないと思います。悟史くんはもういないのに、沙都子の傍にいる理由なんて無いじゃないですか。
………意地があったんだと思います。」
L「意地……」
詩音「……沙都子の事が嫌い。約束なんて知らない。そうする方が私としては自然だった筈なんですけど……どうしても駄目でした。そうする事を選べなかった。
……そう、意地になってたんですよ。あの人との約束を守れる自分でいたい。沙都子の傍に居続ける自分でありたい。結局は自己愛。そして悟史くんの為。沙都子への愛は無かった……と、思います。」
L「……」
詩音「だけど。……沙都子の好き嫌いを少しずつ無くしていったり、沙都子の事を考えたりすることが、私の中でだんだんと特別なことじゃなくなっていっているのが分かるんです。沙都子の為にカボチャを煮たり、沙都子の仕掛けた罠に引っかかったり。そうしている時間が、最近では驚くほどに心地良い。
ただ順応しただけなのかもしれません。今でも沙都子の事が嫌いで、それを意識していないだけなのかも。そんな自分に嫌気が差すこともあります。けど……。私は、今の自分も結構気に入ってるんです。それは間違いなく本心ですから。」
L「……そうですか。貴重なお話ありがとうございます。……」
詩音「なんでこんなこと話したんでしょう…? エルちゃんを通して誰かに伝えたかった……のかな。エルちゃん、私が夢で見た人に似てるんですよ。顔とかは全然違うのに。……変ですね。」