打開

梨花「……名前なら、わかっているのです。」

「! ……。……本当に?」

梨花「はい……でも、彼らに対する対策等は全く思いつかないのです……。申し訳ないのです…名前だけ分かっていてもボクには使い道が思いつかなかったのです。書類化されているわけでもないですし……。」

「それはどの程度なんだ? 名前と顔が一致しているのは鷹野三四だけなのか?」

梨花「……理由は上手く説明できないのですけど、鷹野を含め、今回の実動隊のメンバー全員と顔はほぼ頭に叩き込んだのです。完璧とは言えないかもしれないのですが、何かの役に立つかと思いましたのです。でも…。」

「……いや。十分だよ」

梨花「え…?」

「言ったはずだ。僕の父は警察だと。そして梨花ちゃんが知る、山狗の情報があるのであれば、それは大きな手がかりになる」

梨花「手がかり…ですか。」

「そうだ。僕なら父達を信用させることなんて容易いし、仮にこの瞬間に踏み込まれても取引することが出来る。だってこっちは向こうの機密を握っているんだから。僕に任せておけば何も心配はない」

梨花「ライト…。」

梨花(すごい……ちゃんと道を示してくれた…! ほら羽入、見なさい! ライトは決して竜崎に負けてない! それどころか、自信に溢れている! あは、あはははは!)

羽入(………。………。)

「梨花ちゃんは絶対に僕が助ける。でも、万が一ってこともあるかもしれない……。……この紙に、梨花ちゃんが、知っている限りの名前を記して欲しい」

  

  

ノートに関わった者は。

「絶対にそんなことはさせないが、もし僕たちが倒れた後に誰かが発見してくれれば、僕たちの意志は受け継がれるかもしれない。さらに言えば、形にした情報は分かりやすい取引の材料になる」

梨花「分かったのです。」

「僕は下に降りて電話をかけてみるよ。警察を動かす。…封筒はあるかな?」

梨花「? あるです。……これです。

「書き終わった後、用紙はこうやって……中に入れておいてくれ。そうだな…。あの時計の裏にでも隠しておこうか。警察が見つけてくれるかどうか不安だけど、山狗達には絶対に発見されたくないからね」

梨花「……わざわざ封筒に入れてくれなくても、そのくらい分かるのです。ライトはボクを馬鹿にしすぎなのです。」

「ははっ。ごめんごめん」

梨花「……ふふ。

「梨花ちゃん」

梨花「はい?」

「名前を書く時にその人の顔を思い浮かべながら書いてね。効果があるかどうかは分からない。けど、そういう行為に厄払いの効果があるって聞いたことがあるんだ」

  

  

盲目

「こんな時に神頼みだなんて情けなくて涙が出るけど、こんな状況だからね。それに梨花ちゃんみたいな可愛い巫女さんなら神様も……オヤシロさまも味方してくれるかもしれない。もし神が無力でも、死んでいった皆が力を貸してくれるかもしれない。……ごめん、変だよね、こんなこと……」

梨花「…そんなことないのです。分かったのです。出来る限りやってみるのです。」

「ああ…ありがとう」

梨花(……ライト…ありがとう…。)

羽入「ライトは頼りになるのです……。」

梨花(ええ、そうね。今回も沙都子たちを助けられなかったけど、だからといって自暴自棄になることは出来ない。ライトならきっとなんとかしてくれる。もしも次の世界に行ったら、まずライトに助けを求めましょう。今までは行動が遅すぎたのよ。)

羽入(……。……。)

梨花「……? ライトの用意してくれたこの紙、端っこの方に文章が書いてある。『大きな声でおっぱいと叫んで静かに自殺』? ……なにこれ。」

羽入「……さっき封筒に入れる前に書いていたのです……。おまじないではないですか?  さぁ、今は時間が無いのです。出来ることをするのです。」

梨花「……ええ。まずは……。」

羽入「ボクも協力するのです。……梨花。」

梨花「なに?」

羽入「……なんでもないのです。」

  

  

月、明かりの中で

リューク『……なぁ』

「なんだよ」

リューク『お、会話してくれるんだな』

「……ノートを触った瞬間に梨花にリュークの姿が見えるだろ。騒がれたら台無しだ。封筒からページを取り出してる間に僕は退散する時間を稼いだってわけだよ」

リューク『よく俺の聞きたいことが分かったな』

「僕は器用だからね」

リューク『……。お、電話か?』

「父さん、あるいは大石を言いくるめて警護を求めよう。無論、大人数だ。梨花の話が本当であればこの場はこれで全て終わるはずだが、この村の人間は総じて頭がおかしいからな。全く信用できない。………。………」

リューク『……くっくっく……話し中か?』

「くっ……! 携帯は…!? ……。……くそっ!」

(まずい! ……電話線を切り、その上、妨害電波か? 妄想じゃなかったのか! ……既に行動を起こされているとは……。だが……もうすぐ……)

??「おっぱい!!」

「!」

??「おっぱい!!」

??「おっぱい!!」

リューク『……』

(やった! 梨花の情報が正しいかどうか不安だったが……)

リューク(おっぱい好きだなー、こいつ)

「さて、作戦変更。まずは余分なものを処分処分」

  

  

月明かりの中で

梨花「ライト…終わったのです。…ライト? どこですか?」

梨花(部屋が……暗い……まさか…なにかあったの…? 電気を落とされた? ……でも2階は……。)

「お。早いねー。おつかれさま」

梨花「! …ライト? どこに…。……ふざけないで欲しいのです。…ライト。」

「待って。いま書き終わるから」

梨花「…何をですか? …ライト…恐いのです。…ライト。」

梨花(なんだろう……なんで私はこんなに震えて…。)

「封筒はちゃんと隠した?」

梨花「はい…。時計の裏に…。」

「偉いぞ梨花ちゃん。ここまで暗いとさすがに書き辛いや

梨花「明かりをつけて書けばいいのです……。…ライトはお馬鹿さんなのです。」

「あははあと5秒」

梨花「ライト…ライト……。ぅ…恐い…ライト…恐いよ…。」

梨花(恐い…死ぬのが、じゃない…ライトが殺されてしまうのが、恐い…でも! 恐がっている場合じゃない! 早く逃げないと……。ライトを…助けないと……!)

「ゼロ。あーお腹減った」

梨花「ライト…ライト…ぁっ…ごほっ…。

「おやおや? 風邪?」

梨花「分からないのです……ごほっ…ごほっ…。ライト…。」

梨花(この症状は……。ライト…逃げて…!)

「『明かり』だけに『ライト』なんちゃって」

リューク『最高につまんねーよ』

梨花「! だれ…!? うぅ! あっ…がっ…ごほっ! ライト…逃げ…ぐぅっ…あぐっ……。」

梨花(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

「持つべきものは友達だ」

梨花「―――。」

  

 助けてあげられなくて、ごめんなさい。

  

  

青の1号

羽入「ただいまなのです。」

梨花「おかえりなのです。」

羽入「……なんだか梨花の機嫌がえらく良いのです……。」

梨花「今日ライトがね…。」

羽入「またライトの話ですか。梨花はライトが大好きなのですねー。」

梨花「…そ。

羽入「そ?」

梨花「そー。

羽入「そー?」

梨花「そんなんじゃないわ。…………多分。」

羽入「……多分…ですか。ライトは圭一のように飛び抜けた『運命への対抗心』はありませんが、圭一には無い冷静さと知性があるのです。それを言えば竜崎もそうなのですが……意外とイケメン顔が好みなのですか?」

梨花「恋愛云々は魅音とかレナとか…とにかく自分の事としては考えたことないし……。そー、なのかなー…。よくわからない。みー。」

羽入「……ああいうのが好きなのですか…へぇー…ふーん…。」

梨花「……なんだか生意気ね。今は沙都子が留守だから、なんでも出来るのよ?」

羽入「な、なんですか?」

梨花「キムチ食べるわよ!」

羽入「あぅあぅあぅ……い、いつまでもそんな圧力には屈しないのです!」

梨花「ポーション飲むわよ!」

羽入「こ、殺される!!」

  

  

  

富田「あれ? ライトさん、こんばんわ……え? はい、今までこいつと二人で遊んでました。いや……2時間くらいは誰とも会ってないし、誰も見かけてないですね。どうかしたんですか?」

岡村「俺らはこれから帰るところです。ライトさんもですか?」

  

  

  

どうも、ココリコの岡村です。

岡村「はい……。僕はライトさんに誘われて梨花ちゃんのお見舞いに行きました。元気を出して貰おうって……。はい…。ライトさんは僕を電話で呼び出した後、『他の子も呼ぶから先に行っててくれ』って……。
そうです。それで僕、梨花ちゃんの家に言って……はい、梨花ちゃんと色々お話しました。ライトさんは富田くんと一緒でした。一緒に他の子の家に……。あの、その、僕、梨花ちゃんのこと好きだったから……気を使ってくれたんだと思います。
それでしばらくお話して……ライトさんが遅かったので電話しようと思ったんですけど……そうです、梨花ちゃんの家の電話が……。その後は……急に電気が消えたり、周りから変な叫び声が聞こえたり……。僕、恐くなって…梨花ちゃんは大丈夫かなと思って2階に上がったら……。」

  

富田「はい。ライトさんと一緒に他の友達を呼びに行きました。ライトさんは『岡村くんと梨花ちゃんの邪魔しちゃ悪いから』って、ちょっとゆっくりめに友達の家を周ることにしたんです。そんで他の友達も結構集まって、夜遅くだからってことで大人のひと2人にも同行して貰ったんですけど……。
その後は……はい、梨花ちゃんの家の周りには沢山の……。」

  

  

こだわりすぎず! かんがえすぎず!

総一郎「証言にあった『変な叫び声』は周囲の住民からも裏が取れている。内容までは分からなかったそうだが…。近くで誰かが騒いでいるんだと思い、大したこととは考えなかったそうだ。
一方、ライトは富田くんと共に友達の家を周り、その中の一人の保護者の方に同行して貰っている。そして古手宅の周りで6名の死体を確認。ライトは1人の保護者に子供達を預け、もう1人の保護者と古手家に入った。
電気は大本から断ち切られているようで点かない。暗闇の中……月明かりを頼りに二人は屋内を進み……。携帯電話の微弱な液晶ライトに照らされ、気を失う岡村くんと、自ら喉を掻き毟って死亡したとみられる古手梨花くんを発見した。……」

刑事Cすぐにライトくんは警察へと通報。その頃には古手家一帯の電波異常は消失していたそうですね。後の捜査で計20余人分さらに鷹野三四の死体も発見されている、と。
不可解なのが、その全員が統一性の無い自殺者だということ。銃を所持していた者もそれを使わずに死んでおり、各々が『音を立てずに』自殺したという共通点があるにはありますが…。まるで騒ぎを起こすことで警察に駆けつかれることを嫌がったかのように。警察内部に潜り込んでいたと思われる山狗も同じように死んでいます。
そして何よりも不気味なのは、岡村くんと富田くん両名が、事情聴取を終えた直後に……交通事故で死亡しているということですね。これは…敬虔な信者じゃなくても、オヤシロさまを信じたくなりますな。」

  

  

一度はおいでよ雛見沢

「『東京』の連中が乗ってた車からはわんさかと情報が手に入った。入江診療所からも重要な資料が大量。入江も重要参考人として引っぱった。ついでに言えば、村人はともかくとして古手梨花の死は雛見沢症候群感染者や、古くから雛見沢に住む人々に絶大なる悪影響を与える可能性がある。だから出来る限り隠蔽する方向に僕も進言した。
まあ、これだけの手柄を立てたんだ。父も本庁に返り咲けるだろう」

リューク(村の連中……急激に寿命が長くなったな)

(しかし大勢の死者を出してしまった。犯罪者を殺すという、神としての行動に矛盾は無いが、すこし身近な場所で人が死にすぎた……。もっと慎重にやらなければ……)

リューク『ライトの検査はいつ終わるんだ?』

「異常なんて出るわけないからすぐに終わるよ。そりゃあ雛見沢症候群なんてものが公になれば検査もされる」

リューク『なかなか面白な村だったな』

「そう? 食べ物は美味しかったかな。ああ、それと証明も出来た」

リューク『証明?』

「僕の行動が『東京』を打ち倒し、雛見沢を救った…。リュークはデスノートで人を殺すことしか出来ないと思ってるだろう? 僕はそうじゃないことを証明したんだ。僕は大勢の人の生命を救済した。まさに神の行い。神の力! ああ……僕は神になる……!」

  

  

そうだ、東京に行こう

総一郎「ライト」

「……なんだい父さん」

総一郎「やはりお前の言う通りだった。心臓麻痺による死亡者が複数発見された車から『東京』とやらの有力な情報がつかめた。何らかの圧力がかかると思っていたが……。私も『東京』の捜査の為に本庁に呼び戻された。
……こう言ってはなんだが、沢山の犠牲を代償にしての復帰だ。素直には喜べんが、やはり彼らの死を無駄にしてはならない」

「………理性では理解してる。でも……!」

総一郎「ライト……雛見沢には辛い思い出が多い。忘れたいこともあるとは思う。だが、それだけではないだろう?」

「ああ……僕はここでのことを忘れない。それが、彼女達への手向けだと思うから。忘れない……僕は忘れない!」

総一郎「…サユや母さんは身近な人たちの死で傷ついている。二人で支えてやろう」

「……そうだね。それは僕たちの役目だ」

(思っていたよりも簡単に事が進んだな……。つまらない…やはり、新世界の神の前では何人も平等に無能なのか……)