貴子視点 卒業直後 書く前から言い訳。制服の設定、いまいちよく判ってません。
高校は卒業した、大学にはまだ入学していない。多分、人生において一番時間が有り余ってる時期。そして、なんと言っても私は家に居るのが嫌い。
そういうわけで、私は卒業した翌日から、毎朝、学校に通っていたのと同じ時間に起き、同じ時間に家を出て、瑞穂さんのお宅に通っている。
何をするわけでもなく、内容のあるのだかないのだかよく判らない事を会話をして、窓から外を眺めたり、一緒に買い物に行ったり、映画を見に行ったりと非常に充実した毎日を送っている。
通いなれ始めた瑞穂さんのお宅への道。そこを歩いていると、無駄に大きい門の前に引越し業者らしい名前の入ったトラックが1台止まっているのが見えた。
「おはようございます、瑞穂さん」
「おはようございます」
トラックのそばで運転手と会話をしていた瑞穂さんに声をかける。手に持つ伝票を見ると、どうやら荷物の受け取りをしていたようだ。
「何ですの?」
業者の人たちが、大きなダンボールをいくつか玄関にまで運んでいるのが見えた。宅配便にしてはずいぶんと量がある。
「寮においてあった私物を送ってもらったんです」
引越しと言うわけですか・・・1年にも満たない間でずいぶんと増える物なのですね。
「手伝いますわ」
どうやら業者の人は、玄関にまでしか運ばないようで、そこからの片付けは家のものでするしかない。
一人で仕分けしきれない量ではないと思うが、一人で片付けさせて、それを見物できるほど不出来な人間ではない。
「悪いですよ」と、瑞穂さんは辞退してきたのだが、結局、私のほうが押し切って片付けの手伝いをする事になった。
流石に下着などの片付けは瑞穂さんの一人に頼みましたが・・・
「しかし、卒業したのは10日くらい前なのに、改めて教科書とかを見ると、なんだか凄く懐かしいですね」
「そうですね・・・多分、二度と開いたりはしないのでしょうけど、なんとなく、捨てがたいですわ」
その私の言葉を肯定するように、瑞穂さんは教科書たちを捨てずに別の段ボール箱に詰めていった。
ん?やけに薄い教科書・・・って、これは雑誌ですわね。ダンボールの一番下に入っていた雑誌を取り上げ、何気なく中身を見た私は、そのまま、別の世界に落ちてしまった・・・
「えっ?・・・あぁぁぁ!それ、まりやのお土産!」
遠くで瑞穂さんの声が聞こえたる・・・上が金髪だと下も金髪なのですね・・・
どのくらい失神していたのかはよく覚えてませんが、目が覚めると瑞穂さんがばつの悪そうな、心配するような微妙な表情で私を見下ろしていた。
「あの・・・」
「すいませんでした。でも、一つ言わせてください。あれはまりやが外国から密輸した物ですから」
「・・・」
「・・・貴子さん、お願いですから、汚物を見るような目はやめてください」
やましいからそういう風に思ってしまうだけです。と思う・・・自信は余りありませんが。
「・・・とりあえず、捨ててください」
まだ、顔が熱くて、心臓の音がうるさい。あんなのを見て男性は本当に興奮するのですか?うっ、思い出したら、また気分が・・・
「捨てましたから・・・」
外国旅行のお土産で、堂々とあんなのを密輸するまりやさんもまりやさんですが、それを寮のゴミ箱に捨てられず、半年も部屋に置いた挙句、実家にまで持ち帰ってくる瑞穂さんも瑞穂さんです。
「ところで、瑞穂さん・・・」
「はい?」
私は頬を染め、重大決心を口に乗せた。
「・・・金髪がよろしければ染めますわ・・・下も」
「そんな事はありません!全然そんな事はありません」
「とりあえず、何か買ってきます」
失神から回復した時には、すでに12時を30分以上回ってしまっていた。
「デザートは欧州屋のレアチーズでいいです」
ケーキ一つでアレを許して差し上げるのですから、安上がりだと思ってください。ちなみに欧州屋とは近くにある評判の洋菓子屋さん。ケーキも美味しいが、焼き菓子も美味しい。
はいはい、と苦笑しながら出て行く瑞穂さんの背中を見送り、私は片づけを再開した。と、言っても残ってるダンボールは一つだけ。
お弁当を買ってから、欧州屋に寄れば多分30分ほどは帰ってこないはずだから、帰って来る頃には全て片付けは終わっているだろう
一人で残った段ボール箱を開き、中身を確認した。もう、あんな本は入ってないでしょうね・・・体操服と、制服が夏冬が2セットずつ。それに体育館用シューズ。男女を問わずに着れるような私服が数着。
当たり障りのない普通の服ばかり。安心したような、物足りないような・・・って、何が物足りなのですか!私は!?
一度、全てをダンボールから取り出し、私服の方はハンガーに通してクローゼットの方へ。制服はどうするのでしょう?もう着る事もないでしょうけど・・・捨てるのもしのびがたいような気がしますわね。
夏の制服の肩を持ち、目の高さまで持ち上げて見る。普通のセーラー服に比べて体の線が出やすい制服。
・・・・・・・・細い。
瑞穂さんの腰に手を回すたびに思っていたことだが、彼のウェストはかなり細い。正確な3サイズを聞いた事はないが、話によるとまりやさんよりかは細いらしい。
まりやさんも運動をしていたのだから、決して太めなわけはなく、どちらかと言えば細い方なのだが、それよりも細いとなると・・・
「・・・まさか、私よりも細いと言う事は・・・」
気になり始めると、確かめたくなるのは人間の持つサガみたいな物だと思う。しかし、実際に聞いてみるのも恥ずかしい。
「・・・これを着ることが出来たら、少なくとも瑞穂さんよりも太いと言う事ではない、と言うことですわね・・・」
時計に視線を移す。まだ、瑞穂さんが出てから10分と経っていない。さっと脱いでさっと着替えてしまえば、ばれる事はないはずですわ。
萌黄色のワンピースを脱ぎ、白い清楚な下着姿になり、久しぶりに恵泉の制服に着替え始めた。
うぅ・・・やっぱり・・・ファスナーが腰の辺りで止まってしまう。
しかし、ここで素直に脱いでしまえば、負けを認めてしまったような気がするし、あと少しで上がりそうな気がする。
思いっきり息を吐いて、勢いをつけて一気に・・・こうして・・・・・・ぷはぁ!むっ、無理だというのですか!
もう一回、胸の中に入っている空気を最後の1ccまで押し出して、今度は勢いをつけるのじゃなくて、少しずつ上に上げる感じで・・・ギチ・・ギチ・・・嫌な音が聞こえたような気がするが、聞こえてない振り。
あれ?ショーツが変、引っ張られているような・・・少しはしたないが、スカートの中に手を入れて、腰の辺りに触れる。
「か・・・噛みこみました?!」
うそっ、えっ、わっ・・・あわててチャックを下ろすが、もう、後の祭。お腹を思いっきりへこませた所為で、僅かに緩んだ下着が必要以上に密着したファスナーに噛み込まれてしまっている。
しかも、へこませていたお腹も普段の状態に戻ってしまったおかげで、その噛み込みはもはや完璧に後戻りできない所にまで来てしまった。
恐る恐る鏡に視線を向ける・・・そこには、お腹の辺りがはちきれんばかりにパッツンパッツンになった制服を、中途半端に着た間抜け面の女が一人。
こんな間抜けな姿を見られたら、瑞穂さんに嫌われてしまう。と言うか、恥ずかしくて、生きていられない。
しかし、ガッチガチに噛みこんだファスナーは下がるどころか上がりもしない。
とりあえず、パンティを脱いで見ましょう。もしかしたら、パンティの生地が外れるかもしれない。
10分後
・・・・・・・・まずい、これはまずい。パンティを上だの下だの動かすうちに、変な気分になりそうな予感がしてきた。間抜けの上に変態ですか?私・・・あぁぁ、もう!下りろ!!
びりっ!!
破れちゃいました・・・あははは・・・
とりあえず、パンティは脱げました・・・二度と履けませんが・・・
それをハンドバッグの中に丸めて突っ込んだ。どうやって帰ればいいか?と言う話は後で考えるとして、今はこの制服を脱がなくては。
パンティは破れたが、噛みこんだ生地は当然のようにそこに残っているのだから、ファスナーが少しでも動きそうな様子はない。
早ければ今すぐにでも帰ってくる。遅くても15分とは掛からないはず。
どうしてこうなってしまったのだろうか・・・私が馬鹿だからですわね、そんな事は判ってます。ええ、判っていますとも。
しかし、いくら後悔しようが、神様にお詫びしようが、マリア様にお願いしようが、ファスナーは1mmたりとも動かない。
私は時間も忘れ、必死になってファスナーと格闘した。もう、こんなに必死になったのは、瑞穂さんと同じ大学に入るために勉強した時以来だと思う・・・つい先日までの話ですわね。
その前はバレンタインデーにあのそびえ立つ黒いバベルの塔を見た時で・・・ふっ、私、いつも必死ですわね。
などと馬鹿な考えとともに、ファスナーと戦っていると、一番好きだが、今は絶対に聞きたくはなかった声が聞こえた。
「ただい・・・ま?・・・何をやってるんですか?」
二つのビニール袋を持った瑞穂さんが見ているのは、明らかにサイズの小さな制服を脱ぐ為に四苦八苦している馬鹿の姿。
「ひっ!」
こういうときに限って、お弁当屋さんもケーキ屋さんも空いてて、全然待たずに帰ってこれたということですね?
冷静に自体を分析した所で、自体が好転するわけもない。しかし・・・神は居ないのでしょうか?
「貴子さん・・・」
「何も言わないでください。それと、珍獣を見るような視線は辞めてください」
「仕方ないですね、切っちゃいましょう」
「・・・はい」
事情を説明すると、瑞穂さんはあっさりとそう言った。説明するような事情があったのか?などとは聞かないでください。
ふふふ・・・誤魔化そうとしたらマントル層に達するような墓穴を掘ってしまいました・・・とだけ言っておきます。
爆笑でもしてくれれば、まだ救いがあったのに・・・。
荷解きに使っていたはさみを持って、瑞穂さんが私の背後に回る。冷たいはさみが薄い夏の制服越しに私の肌に、ひんやりとした鋼の感触のを伝える。
・・・・・・・しかし、いつまで経っても、そのはさみが生地を切り取る音がしない。
「あの・・・」
瑞穂さんが非常に申し訳なさそうな声で、私に声をかけてきた。
「何ですか?出来れば、早くして欲しいのですが・・・」
腰の少し上までがもろに開いた服、これがドレスならいくらでも見つめていてほしい所ですが、ファスナーの噛みこんだ制服では・・・恥ずかしさで人間は死ねる事を証明してしまいそう。
「・・・このままだと・・・肌まで切ってしまいそうなんですが・・・」
はは・・・人間、恥ずかしさでは死ねない生き物なんですのね・・・やっぱり。
「た・・・多少はいいですから」
それでも出来れば切られたくないので、私はまた、思いっきり息を吐き、少しでもウェストを細くする努力をする。
やたらと肺活量が鍛えられそう・・・。
「では・・・行きますね」
ジョキッと軽い音がして、私の腹部がきつい服から解放され、すとんとスカートが床に落ちた。はぁ・・・苦しかった・・・
「ご迷惑をおかけしました」
本当は恥ずかしくて、瑞穂さんの顔を見ることが出来ないのだが、それでもお詫びだけは・・・と思い、後ろを振り向くと、瑞穂さんが真っ赤な顔をしている。
「貴子さん・・・下着・・・」
「えっ?・・・きゃぁぁぁぁぁ!!!!」
何度も見られてるはずなのに、こういう場合だとやけに恥ずかしいんですのね・・・
PS.
「あっ、貴子さん、あの制服。僕、間違えて洗濯機にかけちゃって、縮んじゃってたんですよ」
「いまさらそう言うことを言われても、何の救いにもなりませんって・・・」
(おしまい)