貴子ED。貴子視点。続き物なので過去の「海に行こう!:思いつき編」と「海に行こう!:用意をしよう!編」を読まなきゃさっぱり判らないかも。
ギャグなので深く考えないように。一部、奏EDの設定も混じっているような気がしないでもないかもしれない。
車を借りてきた日の夜、二人で地図を広げて見つめている。
「結構遠いとは思ってましたが、本当に遠いですね」
「大体700キロちょっと、と言った所ですわね」
ちなみにルートは首都高某IC→東名→名神→中国→山陽→瀬戸中央某IC。そこからフェリーに乗って別荘のある島に行くそうです。
余談ですが、瑞穂さんが高速道路に乗ったのは、自動車学校で2区間だけ。
「無謀だとは思いませんか?瑞穂さん・・・」
上目遣いに見上げる。ちょっと引きつった瑞穂さんの顔が見える。
「でも、紫苑さんも免許はお持ちのようですから、疲れたら変わってもらいますよ」
紫苑さまもペーパードライバーって言うことはないんでしょうね?これまでの流れを見ると非常に嫌な予感がします。
あっ!
と言う間に当日。まりやさんはそのまま、紫苑さまが寮組二名をピックアップした後、鏑木家へやってくる予定になっている。
本当は恵泉の寮まで二人を迎えに行きたかったのですが、まだ、瑞穂さんを覚えている生徒と鉢合わせする危険を考え、紫苑さまがお迎えと言う事になった。
まりやさんが行くと言う案もあったのですが、強硬に上岡さんが嫌がって・・・気持ちは痛いほどわかります。
「何ですの?その大きなクーラーボックスは」
荷物は全て宅配便で別荘に送っているはず。私は普段から使い慣れたハンドバッグ一つ、瑞穂さんに至っては手ぶら。
「ばっかねぇ~これから1日、ずーっと車よ?6人で。飲み物だって沢山なきゃ困るでしょーが」
くっ・・・確かに言われてみれば・・・しかし、彼女に正論でへこまされると、無性に腹が立つ。
そのクーラーボックスをライトバンに積み込んでいると、紫苑さまの車がやってきた。
普通に入ってきて、普通に駐車スペースに駐車・・・なんだか、凄く救われたような気がする。
「おはようございます。瑞穂さん、貴子さん、まりやさん。今日はお誘いありがとうございます」
紫苑さまは手に少し大きなバスケットを持って、深々と頭を下げる。
続いて、寮組の二人が車から降りてきた。手にはそれぞれ大き目のポットを1つずつ持っている。
「おはようございます、紫苑さま。それに奏ちゃんとユカリン」
「ユカリンって言わないでください!」
由佳里さんとまりやさんが車の傍でじゃれあっている横で、大きなリボンを揺らして奏さんがやってきた。
「まりやお姉さま、会長さん、それにお姉さまもお久しぶりです」
奏さんの口調が少し変わったみたい。ふふ、もう最上級生で学園では「お姉さま」と呼ばれる立場なんだから、当然ですわね。
「もう、会長じゃないのですから、貴子でいいですわよ。奏さん」
軽く微笑み、リボンの付いた彼女の頭を軽くなでる。
瑞穂さんは「お姉さま」と呼びかけられ、少しくすぐったそうな苦笑を漏らすが、何も言わず私と同じように奏さんの頭をなでた。
「アイスティとアイスコーヒーを作ってきました。紫苑さまもお弁当を持ってきてくれたんですよ」
わ・・・私だけ何も用意してないような・・・
「うふふ、6人で食べると足りないかもしれませんけど・・・」
バスケットをクーラーボックスの上に乗せる。
「ここで遊んでても仕方ないですし、出発しましょう」
瑞穂さんの言葉に全員が答え、いざ、全行程700キロ。おそらくは一筋縄ではいかないであろう旅行が始まった。
出発時刻AM9:00。ちょっと泳ぐのは無理でしょうかね・・・
と、ここで座席表
貴 瑞 ↑
ま 由 進
紫 奏 行
荷物
まりやさんに背後を取られてる・・・何かやってきそう。
「しかし、貴子がナビって大丈夫なの?地図なんてろくに見たことないくせに」
むかっ。案の定、いきなりちょっかいを出してくる。
「大丈夫ですよ。高速道路ですから、看板に書いてるとおり走れば、目的地に着きます」
車はちょうど首都高に上がった所。東名高速の看板も出ている。逆走しないかぎり、嫌でも東名に続くジャンクションには着く。
「フォローにも何にもなってません!」
車内に軽い笑い声が響く。
「瑞穂さん、お疲れになったらいつでも変わりますから」
紫苑さまがルームミラー越しに瑞穂さんに声をかける。多分、このメンバーの中では一番運転が上手。いや、多分じゃなくて絶対。
「紫苑お姉さまの運転は凄く丁寧ですからね。誰かと違って」
「由佳里、今、こっち見たでしょ!」
「心当たりがあるから、被害妄想になるんですよ。まりやお姉さま」
「むきー、言うようになったじゃない?」
まりやさんは隣の座席に座る愉快さんの頭を抱え込んで、こめかみに拳をこすりつけている。
「由佳里ちゃん、本当のことを言ったら駄目なのですよ~」
「そんなことはありませんよ。まりやさんの運転は、とてもスリリングなだけなんですから」
「貴子~あんただけは私の味方よね?」
後部座席で集中砲火を受けたまりやさんが、なぜか、私にフォローを求めくる。
「まりや車に乗るくらいでしたら、歩いて岡山まで行きますわね、私は」
「ぐわっ!少しくらいフォローしなさいよ、竹馬の友」
「知り合いと友達は違いますわよ?」
「まりやの運転って、そんなに危ないの?」
車内が急に静かになる・・・瑞穂さんはまだまりや車に乗ってないんですね・・・
「わーん、皆がいぢめるよ、瑞穂ちゃん」
まりやさんが芝居臭い泣きまねを始める。
「もう、いいわよ。奏ちゃん、悪いんだけどクーラーボックスから飲み物出して」
「はぁい。何でもいいですか?」
奏さんが後ろを向いて、クーラーボックスを開き、中からシルバーの缶を出して、まりやさんに手渡す。
「では、私もいただけますか?奏ちゃん」
「私も頂戴」
紫苑さまと由佳里さんも要求を始め、結局、後部座席全員が一本ずつジュースの缶を握った。
私ももらおうかしら?と、後ろを振り向いた瞬間、4人が持つ缶が見えた。
「あっ!紫苑さま、飲んじゃ駄目です!」
「あら・・・?これ、ビールですわね」
思いっきり「スーパード○イ」の文字。紫苑さまは一息に飲み干した後、にこりと微笑んだ。か・・・可愛い・・・。
「えぇ!!!」
思わず瑞穂さんが後ろを向く。わっ!前見て前!!
「あはは・・・一人で700キロか・・・」
そっかぁ・・・今回の車難はこれか・・・瑞穂さん、死なない程度に頑張ってください・・・
「それと、奏さんと由佳里さんは高校生でしょう。ビールなんて飲んではいけません」
って言うか、飲む前に気づいて欲しかったなぁ・・・3人とも。
「大丈夫なのですよ~」
「そうそう、大丈夫ですよ~」
一口飲んだだけで、すでに真っ赤になってる二人が、けらけらと笑っている。笑い上戸か・・・この二人。
「まりやさんも!高校生が来てるのに!もしかして、そのクーラーボックスの中身、全部、ビールですか!?」
「そんなことないわよ~サン○リーのカ○テルクラブとか、ワインとかも入ってるから」
結局、全部アルコールかい・・・
「こんな事がばれたら、停学物じゃないの・・・」
「大丈夫なのですよ~処分を決める人はここにいるのですよ~」
「はぁい、ユカリンが生徒会会長なんです~奏ちゃんはエルダーなんです~」
手に持った缶ビールをぐびぐびと煽りながら、爆弾発言をする二人。生徒会会長とエルダーがそろって飲酒・・・頭が痛くなってきた・・・帰っていいですか?貴子ちゃん、おうちに帰って、アルバイトに行きたいです。
「もう、貴子は相変わらずお堅いわねぇ~夏休みの思い出なんて、犯罪ぎみな方がいい思い出になるのよ」
「元凶が何を言ってんですか!」
ちなみに紫苑さまはハートマークを飛ばしながら、2本目に手をかけている。もはや、運転を変わるつもりはなさそうだ。
それを見た瑞穂さんの顔に縦線が増えてるような気がする・・・本当に死なないでくださいね。
「硬い事言わないの♪」
と言って、後部座席から手を伸ばして、私の胸をわしづかみ。
「うひゃっ!?」
「おぉ~瑞穂ちゃんに毎晩もまれてる大人の胸だにゃ~」
「会長さんは凄く大胆なのですよ~」
口調が2年前に完璧に戻ってるし、奏さん。
「あらあら、まあまあ」
すでに出来上がってますか?貴女達は!?
「これ以上続けたると・・・貴子さんにひどい事、してしまいそう」
「・・・してください・・・ひどいこと・・・」
あの時のシーンを由佳里さん(瑞穂さん役)とまりやさん(私役)が熱演をし始める。
「演技がなってないのですよ~まりやお姉さまはもっと恥ずかしがってくださいなのです」
すかさず演技指導をする演劇部部長。
「まあ、なかなか、情熱的だったようですわね」
観客モードの紫苑さま。
い・・・生き地獄だ・・・
まだ、出発から2時間。200キロも走ってはいない。ゴールはまだまだ先。
(おしまい)
なお、地方在住の人間が書いてるので、首都圏周りの高速事情が非常に怪しいのは仕様です
多分、首都高走ってたら、渋滞に突っ込んで、もっと時間食ってると思うんだけど・・・