貴子ED。貴子視点。過去にアップした「海に行こう!」の各シリーズを読んでなきゃ理解できないかも。
考えなしに書いてたら、グダグダになってきた。収拾がつくんだろうか?(汗
あれ(前回の引き)から1時間、後部座席から4人の寝息が聞こえる。飲みなれてないアルコールの所為で4人ともあっという間に撃沈してしまった。
「はぁ・・・もう、なんか、むちゃくちゃですわね」
盛大な溜息を一つついて、ハンドルを握る瑞穂さんに声をかける。
「まりやがいますからね」
手のかかる妹のことを話すような口調で、瑞穂さんが苦笑交じりで答える。
「寝てるほうが静かでいいですわ」
30分近い初体験の再現は私たち二人の精神に深いダメージを与えた。深く思い出すとさらに傷口が深くなりそうなので、思い出さないことにする。
「でも、こういうのも楽しいですよね」
「私は二度とごめんです。今度からは、まりやさんの手荷物は事前にチェック致しましょう」
「まりやだったら、隠し持ってきちゃいますよ。きっと」
私もそんな気がします。お祭騒ぎの企画運営だけには頭が回る方ですから・・・過去何回まりやさんの実行したお祭に巻き込まれたことか・・・
『12時の時報の後、引き続き、今週のUKヒットチャートベスト10をお送りします。ポッポッポッポーン。12時です』
軽快なロックを流していたFMラジオが12時になったことを教えてくれた。
「そろそろお昼なんですけど・・・」
瑞穂さんのその言葉を聞きながら、ルームミラーから背後の様子を見る。
「少しお腹がすきましたけど、どうしますか?」
「僕も疲れましたけど・・・」
紫苑さまがお弁当を用意してくれているそうですが、作った方が寝てる間に開ける事は出来ない。かといって、先に何かを食べて、紫苑さまのお弁当を食べ損ねるのもいや。
「とりあえず、次のSAかPAで止まりましょう。瑞穂さんもお疲れのようですし」
「あれ・・・瑞穂ちゃん、もう着いたの?」
某SAに到着したのは、それから15分ほど走った頃だった。
「そんなわけありますか。まだ、半分も来てませんわよ」
SAの自販機で買った缶ジュースとジャンボアポロを摘みながら、目を覚ましたまりやさんの寝言に答える。
「あれ、貴子・・・瑞穂ちゃんは?」
あまり飲んでなかったのか、すでにまりやさんの酔いはさめているようだ。その割にはずいぶんとテンションが上がっていたようだけど・・・
「お手洗いです。それと貴女たちの飲んだお酒の缶を捨てに行ってます」
「ふぅん」
運転席と助手席の間に置いたチョコに手を伸ばして、それを1つ2つ手に取る。
「起きたのでしたら、ほかの方も起こしてくれますか?もう、お昼の時間ですわよ」
まりやさんは「はいはい」とまだ眠たいのか目を擦りながら、他の3人に声をかける。
「あれ、まりや起きたの?」
瑞穂さんがお手洗いから帰ってきて、運転席に座り込んだ。
「起きたわよ~貴子と二人きりの時間のお邪魔だったかしらん?」
残りの三人も起きて、それぞれが一度車から降り、思い思いに硬くなった体をほぐしている。
高校生組の二人はまだ酔いが残っているのか、少し足元がおぼつかない。
「そんな訳ないだろう?それよりご飯にしようよ」
まりやさんの冗談を軽く受け流す瑞穂さん。こういうことが出来ないから、私はまりやさんと話すたびに口げんかをしてしまうんでしょうね。
「主よ、今から我々がこの糧をいただくことを感謝させ給え。アーメン」
「「アーメン」」
全員がまりやさんの号令に合わせて手を合わせる。
「お姉さまのそれも久しぶりですね」
一口サイズのハンバーグに手を伸ばした由佳里さんが、少し懐かしそうに言う。
「今は由佳里さんがやっているのですよ」
奏さんが紙コップにアイスティを入れながら、付け加えた。
大きめの車のおかげで、おにぎりとサンドイッチが詰まったバスケットを開いてもそんなに狭いとは感じない。ここが人の多いSAでなければ、外で食べても気持ちいいだろうと思う。
「あっ、僕はアイスコーヒーをもらえるかな?」
おにぎりの方を摘んでいる瑞穂さんがそう言う。おにぎりにコーヒーと言う組み合わせはどうなんでしょう?
「味の方は如何ですか?お口にあえば良いのですけど」
「美味しいですわよ。紫苑さま」
ローストビーフがはさまれたサンドイッチを食べながら、素直な観想を口にした。マスタードが利いて凄く美味しい。
「今、寮は何人いるの?」
「去年が二人、今年が一人で、五人なのです」
瑞穂さんの問いに奏さんが答える。
「じゃぁ、私たちがいたときと同じ人数ね」
「あら、まりやさんがいた頃は、奏ちゃんと由佳里さん、まりやさんと瑞穂さんで四人でしたのでは?」
「あっ・・・あはは、計算、間違えちゃった」
紫苑さまの疑問にまりやさんが「しまった」と言うような顔をして、誤魔化すようにそう言うと、他の元寮組3人が無言で批判の視線を投げかけている。怪しい・・・
「でも、新入生一人じゃ、上級生のお世話が大変だね」
「そうなのですよ。由佳里ちゃんが苛めるから、大変なのですよ」
「奏ちゃーん、私は苛めてないわよ。まりやお姉さまに教えてもらったとおり、指導してあげるだけだって。陸上部の子だし」
「それは十分いじめになってるよね」
「瑞穂ちゃん、ひどっ!」
元寮組4人のおかしな態度に、私と紫苑さまは軽く顔を見合わせ、首をひねったが、それ以上追求する事はなかった。
流石にもう車内でまりやさんがアルコールをあけることもなく、さしたる問題もなく目的のフェリー乗り場に到着した頃には、日も暮れる時間帯になっていた。
「疲れた・・・事故しなくて本当によかった・・・」
一人で700キロを走破した瑞穂さんは、本当に精根使い果たしたと言うような顔でフェリー乗り場のベンチに座り込んだ。
「帰りは運転しますから」
そんな瑞穂さんに紫苑さまが声をかける。
紫苑さまはあまり飲んでないし、時間もずいぶん経ったからと、何回か運転を変わろうとおっしゃったのですが、それを頑として受け入れなかったのは瑞穂さん本人。
そうこうしているうちにチケットを買いに行ったいた他の3人が帰ってきた。
「瑞穂ちゃん、フェリーを降りたら別荘はすぐだからね」
小さい島とは言え、他にも住んでる人がいるらしく、フェリー乗り場には他にも数台の車が止まっていた。
「ちょうど、すぐにフェリーが出るそうですよ。お姉さま」
「大丈夫なのですか?お姉さま」
あまり大丈夫じゃなさそう・・・
フェリーに乗り込むとちょうど水平線の島々の向こうに大きな夕日が沈もうとしていた。
「やっと初日が終わりましたわね・・・」
その夕日を見ながら、私は一人でそうつぶやいた・・・しかし、初日はほんの少しだけ残っていることを私はまだ知らなかった。
「全然少しじゃなかったじゃないの。まりや・・・」
確かに走行距離自体は「少し」でしたが、山と海の間を縫うように作られた細い道は、大きなライトバンを運転する若葉マークには厳しかったみたい。
ぺったりと床に座り込んだ瑞穂さんがまりやさんを見上げ、不平を口にした。
「まあ、無事に着いたんだからいいじゃない?」
まりやさんの別荘は海のすぐ近くに作られていて、リビングの大きな窓からは夜の真っ暗な海が見えている。
「お姉さま方、食事の用意が出来ましたよ」
フェリー乗り場のすぐ傍にあったコンビニで買ってきた弁当を並べ終わった由佳里さんが声をかけてきた。
「明日は腕によりをかけてご飯を作りますね」
お菓子から普通の食事まで、料理は何でも得意だと言う由佳里さんは、今日も食事を作るといっていたのですが、流石に時間も遅いので、料理の腕を振るうのは明日からと言うことになった。
「夜の海は吸い込まれそうですわね」
食事が終わり、奏さんの淹れてくれたアイスティを飲みながら、紫苑さまがリビングから見える海に視線を向けてつぶやいた。
「本当に・・・少し、怖いですわね」
「なぁに、貴子。もしかして、怖がりとか?」
私のつぶやきにまりやさんが茶々を入れてくる。そそそそそそそそそそんな訳ないではないですか!
「やっぱり、夏の夜は怪談なのでしょうか?」
ティポットを片付け終えた奏さんが、由佳里さんの隣に腰を下ろしながら、そんなことを言ってくれた。
「かかかか怪談なんて、非科学的な事、私は嫌いですわ!」
「そそそそそうですよ~。怪談なんて辞めましょう」
由佳里さんと私が口をそろえてそう言うと、まりやさんがにやぁと嫌な笑みを浮かべた。この方だけは・・・
「そういえば、寮の瑞穂さんのお部屋って、昔は開かずの部屋だったそうですね」
紫苑さまが何かを思い出したかのようにそう言った。だから、辞めてくださいってば・・・
「あれ、紫苑さまもご存知だったんですか?」
まりやさんが少し意外そうな顔をしてそういった・・・だから、辞めなさいって・・・
「ええ、同級生に寮生が一人いましたから」
あまり付き合いはありませんでしたが、と付け加えた。
元寮生4人が顔を見合わせた後、瑞穂さんが一つの話しをしてくださいました。一子さんという優しい幽霊さんのお話を・・・
話が終わると、悲しいような、胸が温かくなるような・・・そんな空気がリビングの中に静かに訪れた。
「亡くなった方の思い出話をしていると近くにいらっしゃるそうなのですよ」
「もうすぐお盆だから、一子さんも帰ってくるかな?」
瑞穂さんと奏さんが懐かしそうにそういう。
「カソリックにお盆は関係あるのでしょうか?」
自称にわかカソリックな紫苑さまが笑いながらそういう。
「いやぁ~一子ちゃんなら、そういうのあまり関係なさそうじゃない?」
「一子さんなら、去年のお盆に帰るつもりが、道に迷って今頃到着とかってありそうですよね」
まりやさんと由佳里さんの会話はちょっと酷いような気がする。
「第一、幽霊の里帰りでしたら、実家に行くものでしょう?こんな所には来ませんわよ」
「いや、だから、一子ちゃんなら道に迷った挙句、瑞穂ちゃんのにおいに釣られて、ここに来るって事も・・・」
「犬みたいですわね」
「確かに一子さんは犬系の人なのです」
私の言葉にまりやさんと紫苑さまと奏さんが酷い事を付け加える。
「でも、このメンバーに一子ちゃんが来たら、きっと楽しいですよね」
「お姉さま!」
瑞穂さんの言葉にかぶさるようにそう言って、恵泉女学園の夏服を着た誰かが瑞穂さんに抱きついた。
「お姉さま!お姉さま!お姉さま!お逢いしたかったですお姉さまぁ~お盆なので里帰りを許してもらった私は実家を覗いた後お姉さまのご様子を見に行こうとしたのですが、私ってば方向音痴だし、お姉さまの家は知らないしで、うろうろしているうちに眠たくなって寝てる間にまたちょっと時間が過ぎたような気がしたのですが、なぜか起きたら瀬戸内海のあたりだったので、もはや、恵泉女学院にも帰る道がわからなくなって、仕方ないので、この辺をうろうろしてたら、誰かに呼ばれたような気がしてこちらに来たら、お姉さまがいて、もう、一子大感激!!」
『『『『『『どこから突っ込みを入ればいいんだろう?』』』』』』
全員がそう思った。
「あれ?皆さん、どうかしましたか?」
瑞穂さんの首根っこにぶら下がった犬系の人はきょとんとした顔でこちらを見渡してそういった。
(おしまい)
一子まで出しちゃったよ、俺・・・本当にまとまるんだろうか?このお話・・・