貴子視点 海に行こう!に入れると前後のつながりがおかしくなるので入れなかった海ネタ。海に行こう!の番外編のような、全く無関係なような・・・一子は一応いるけど。
ビーチパラソルの下、遠くではしゃいでいるメンバーの声を聞きながら、私はサングラス越しの視線を文庫本に落とす。
耳をくすぐる潮騒の音と頬をなでる潮風が心地良い。
「貴子お姉さまは泳がないのですか?」
ビーチパラソルから少し離れた所で甲羅干しをしている由佳里さんが、不思議そうに視線をこちらに向けた。
「ええ、気分ではありませんから。由佳里さんも泳がないのですか?」
氷をたっぷりと入れた冷たいジュースに口をつける。
「はい。いつも半袖のトレーニングウェアで練習していますから、この辺が目立っちゃって・・・」
彼女はそう言って、二の腕に出来た境目を指差した。
「陸上部の部長さんは大変ですわね」
「はい、そういうわけで、今日はたっぷりと焼いて、土方焼けを消すんです」
嬉しそうにそう言うと、彼女は真夏のまぶしい太陽の下に体を投げ出した。
「あれ、貴子、もしかして全然泳いでないの?」
浜辺で走り回っていたまりやさんが帰ってきて、パラソルの下においてあったクーラーボックスから缶ジュースを手に取った。
「ええ、今日はのんびりとしたい気分なので・・・」
ぐびぐびと缶ジュースを飲みながら、不信そうな表情で私を見つめる。
「まあ、あんたが変わってるのはいつものことね」
大きなお世話です。
「折角海に来てるのですから、貴子さんも泳げばよろしいのに・・・」
紫苑さままでもが帰ってきて、ジュースを手に取った。
「もしかして、月の物なのですか?」
げほっ・・・奏さんの言葉に思わずジュースをむせてしまった。
「それは終わりました・・・」
一応、男性もいるんですから、そういうことは言わないで欲しい・・・と、その一応男性の瑞穂さんは帰ってきてないのですか?
「お姉さまなら、一子さんと一緒に別荘にお弁当を取りに行ったのですよ」
一子さんがついて行ってなんの役に立つのか、非常に疑問なんですけど・・・一人で行くよりかはマシと言うものでしょうか?
そんな話をしながら、まりやさんがいつの間にか寝てしまっている由佳里さんの隣に腰を下ろした。その瞬間・・・
「うひゃっ!?」
間の抜けた声を上げ、由佳里さんが飛び起ききょろきょろと周りを見回す。
「なに!?えっ、あっ!?・・・まりやお姉さま!」
そんな由佳里さんの顔を笑いながら見ているまりやさんの手には、凍る直前にまで冷やされた缶ジュースが握られている。
「由佳里もこんな所で寝てないで、ちょっとは泳いだら?」
「私は良いんです!今日は肌を焼く事に決めてるんですから。泳いだらオイルが流れちゃいます!」
気持ちよく寝ていたところを起こされ、由佳里さんは少し機嫌が悪そうだ。
紫苑さまはそんな由佳里さんとまりやさんの話を聞き、そして、私と由佳里さんのいる場所を見比べたてこういった。
「あっ・・・もしかして、貴子さん、肌を焼くのが嫌なのですか?」
ビクン!私の肩が1cmほど跳ね上がる。一同の視線がテーブルの隅にこっそりと置かれたサンスクリーンに集中する。
ちなみにこれは、普通に市販されているやつの中で一番強力な部類に入る代物。
「べっべつにそう言う訳ではありませんわ」
上ずった声でそう言えば、「はい、私は肌を焼きたくないんです」と言ってるのと同じだ。
「貴子、あんた海に何しに来たわけ?」
まりやさんが呆れた声を上げ、それに他のメンバーが同意をする。
はぁ・・・仕方ありませんわね・・・言い難い理由を小さな声で言う。
それを聞いたメンバーは、なるほど、と大きく頷き、そして、昼食後・・・
「あの・・・皆さん、泳がないんですか?」
まぶしい光の下で遊んでいる瑞穂さんが、不思議そうな顔をして、ビーチパラソルの下でくつろぐ一子さんと由佳里さんを除いたメンバーに声をかけた。
口々に「もう疲れたから」などと言い訳をする4人。全員の視線は瑞穂さんの肌に集中している。
『あの白さは女への挑戦か?嫌味か?』
「どうせ、私は色黒ですよ・・・」
手遅れな約一名は開き直って、土方焼けを消しながら砂浜にのの字を書いていた。
と、一応、ずいぶん前に予告してた使えなかった海に行こう!で思いついてたけど、使えなかった小ねたを投下
なんか知らんけど、やけに難産だったなぁ・・・このネタ。小ねたの癖に、オチが全然思いつかなかった